液晶ディスプレイや液晶表示装置は、スマートフォン、パソコン、テレビ、車載モニターなど、現代の生活のあらゆる場面で欠かせない技術です。
しかし、「液晶とは何か」「液晶表示装置の種類や違いは?」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、液晶の基本原理から初心者にもわかりやすく解説します。
液晶の仕組みや特徴を理解すれば、製品選びや用途に応じた最適な液晶ディスプレイを見つけることができます。
液晶表示装置
・液晶を利用した表示装置(LCD)は、二枚の偏光板と液晶、反射板で構成される(反射型LCDの場合)
・電圧OFF時は液晶が光の偏光を回転させるため光が戻り、白表示となる
・電圧ON時は液晶で偏光が回転せず、後偏光板で光が吸収されるため、黒表示(人が認識)される
液晶とは
液晶は「液体」と「固体(結晶)」の中間の性質を持つ物質です。
【液体のように流れることができ、結晶のように分子が一定方向に並ぶ性質も持つ】
このため「液晶(Liquid Crystal)」と呼ばれています。
特徴
- 分子が並ぶ方向が変えられる
⇒電圧をかけると分子の向きが変わります。 - 光の通し方が変わる
⇒分子の並びによって、光を通したり、曲げたり、遮ったりできる。
光とは

液晶を理解するために、まず光について説明します。
光と色の関係
光には波長(光の振動の長さ)があり、人間の目はこの波長の違いを色として認識します。
- 赤 → 波長が長い
- 青 → 波長が短い
- 緑 → 中くらい
自然光や蛍光灯などは、いろんな波長が混ざった光(白色光)です。
反射・吸収・透過で色を作る
物体の色はどの波長の光を反射・吸収・透過するかで決まります。
- 赤いリンゴ → 赤い光を反射、青や緑は吸収
- 青い空 → 空気中の分子が青い光を散乱
- 黒い物体 → 可視光のほとんどすべての波長を吸収
黒は「黒い光」を反射しているのではなく、光が返ってこない場所。
そして、周囲が光を返すからこそ「そこは黒だ」と認識できる!

つまり、物体が反射・透過した光が目に届く波長によって色を感じます。
光の回転
光は電磁波で、振動方向が特定の向き(偏光)になっています。
液晶分子のように、分子が整列している物質を通ると、光の振動方向が分子の配列に沿って少しずつ回転します。
液晶ディスプレイ

液晶ディスプレイには光の扱い方によって大きく3種類があります。
反射型(Reflective LCD)
構造
表示面 ⇒ 前偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 後偏光板 ⇒ 反射板
光の経路
外光 ⇒ 前偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 後偏光板 ⇒ 反射板 ⇒
(ここから戻り)後偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 前偏光板 ⇒ 観察者
仕組み
外光を利用して液晶表示を見せる。バックライトは不要。
特徴
消費電力が少なく、太陽光下でも見やすい。
用途
電子書籍リーダー、腕時計、電卓。
透過型(Transmissive LCD)
構造
表示面 ⇒ 前偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 後偏光板 ⇒ バックライト
光の経路
バックライト ⇒ 後偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 前偏光板 ⇒ 観察者
仕組み
バックライトの光を液晶が通して画面表示を作る。
特徴
明るいところでも見やすい、色鮮やか。
用途
スマホ、PCモニター、テレビ。
補足
一般的なIPSやVA液晶はほとんど透過型。
半透過(半透過型/Transflective LCD)
構造
表示面 ⇒ 前偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 後偏光板 ⇒ 半透過反射板 ⇒ バックライト
光の経路
外光利用時
外光 ⇒ 前偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 後偏光板 ⇒ 半透過反射板 ⇒
(ここから戻り)後偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 前偏光板 ⇒ 観察者
バックライト利用時
半透過反射板(透過) ⇒ 後偏光板 ⇒ 液晶 ⇒ 前偏光板 ⇒ 観察者
仕組み
透過型と反射型の両方の特徴を持つ。バックライト使用時は透過、外光下では反射して表示。
特徴
明るい屋外でも見やすく、バックライトも使える。
用途
一部の携帯機器、車載ディスプレイ。
まとめ
液晶タイプ | 偏光板の数 | 反射板 | バックライト | 光の利用方法 |
反射型 | 2 | あり | 不要 | 外光反射 |
透過型 | 2 | なし | 必須 | バックライト光透過 |
半透過型 | 2 | 半透射 | 任意 | 外光+バックライト |
液晶ディスプレイ(反射型LCD)の動き
電圧がかかっていないとき(OFF状態)の液晶
液晶は、作られたときに設計者が決めた向きに分子が自然に並びます。
電源オフではその向きが保たれます。
ツイスト型:電圧なし(電源オフ)のとき、液晶分子は螺旋状にねじれて配置されている
光の経路(反射型液晶の場合)
- 入射した光は前面の偏光板で一方向に揃えられる
- 揃えられた光が液晶層を通過すると、液晶分子のねじれに沿って偏光方向が回転する(通常 90°)
- 偏光が回転した状態で反射板に届き、反射板で反射される
- 反射後にもう一度液晶層を通過し、再び偏光方向が回転する
- 回転したことにより、最初の偏光板を通過することが可能となり、光が目に届く
電圧なしでは液晶が光の偏光方向を回転させるため、光は反射して戻ってきても偏光板を通り、目に光が届くという仕組みです。
電圧がかかっているとき(ON状態)の液晶
電圧がかかると液晶分子はまっすぐ揃うので、ねじれがなくなります。
光の経路(反射型液晶の場合)
- 外から入った光は、前偏光板で偏光されて液晶層に入る
- 液晶分子が揃っているので、偏光方向は回転しない
- 光は後偏光板に到達するが、偏光方向が揃っていないため通過できない
- 光は後偏光板で吸収され、観察者には黒く見える
まとめ
電圧なし(液晶分子がねじれている)
- 偏光が液晶で回転
- 偏光板を通過
- 明るく見える
電圧あり(液晶分子がそろう)
- 偏光は回転せず
- 偏光板でブロック
- 暗く見える
液晶の種類
型式 | 分子の基本配列 | 電圧でどう変化 | 特徴 |
TN | 螺旋状 | まっすぐに揃う | 安価、応答速い、視野角狭め |
IPS | 水平方向 | 水平面で回転 | 色再現・視野角良好 |
VA | 垂直方向 | 傾く | コントラスト高い、黒が濃い |
MVA/PVA | VA改良 | 傾く | 視野角改善 |
FFS | IPS改良 | 水平回転 | 応答速く、透過率良好 |
使い分けの基準
用途(使用シーン)
- ゲーム : 応答速度重視 ⇒ TNや高速IPS
- デザイン・写真編集 : 色再現性重視 ⇒ IPS
- 映画鑑賞 : コントラスト重視 ⇒ VA
コスト
- 安価に抑えたい ⇒ TNやVA
- 高品質重視 ⇒ IPS
視野角・設置環境
- 正面以外からも見られる ⇒ IPSやVA
- 正面だけ ⇒ TN
応答速度
- 高速描画が必要 ⇒ TNやゲーミング向けIPS
- 通常の表示 ⇒ 速度はあまり気にしなくてよい
まとめ
- 色・視野角重視 : IPS
- 高コントラスト・映画向け : VA
- 高速応答・低価格 : TN
偏光
光は「電磁波」の一種で、波として広がっています。
波には「進む方向」と「振動する方向」があります。
偏光とは
- 普通の光(太陽光や電球の光)は、波がいろんな方向に振動しています
→ぐちゃぐちゃにあちこちに揺れている状態 - 偏光は、その中から「特定の向きの振動だけを残した光」のことです
→例えば「上下に揺れる成分だけ残す」とか、「左右に揺れる成分だけ残す」
偏光板の役割
偏光板は「特定の揺れ方だけ通すフィルター」です。
液晶表示装置に使われる偏光板は「分子のすだれ」。
すだれの隙間が縦に並んでいたら、縦方向に振動する光だけ通れる。
横方向に揺れる光は遮られる。
偏光サングラスは、この性質を利用して「反射光のギラつき(特定方向に偏った光)」をカットしています。
まとめ
・光は波であり、いろんな方向に揺れている
・偏光は、そのうち1つの方向だけに揃った光
・偏光板は、その方向を選び分けるフィルター
液晶まとめ
液晶は「液体なのに分子がそろって並ぶ特別な状態」
電圧で分子の向きを変えられる ⇒ 光を通したり回転させたりできる
その性質を利用して画面や表示装置に使われている
おわりに
液晶と液晶表示装置の基礎を理解することで、スマートフォンやテレビ、PCモニター選びがぐっと楽になります。
液晶技術は日々進化しており、省エネ性能や表示品質も向上しています。
この記事で紹介した液晶の仕組みや種類を参考に、用途に合った液晶表示装置を選び、快適な視覚体験を手に入れてみてください。
液晶技術の最新トレンドにも注目し、より便利で美しいディスプレイ環境を整えていただけると幸いです。
でわっ!!
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