時計の心臓部で静かに振動し、時を正確に刻む水晶振動子。
その振動数「32,768Hz」は、ただの数字ではありません。
なぜこの奇妙な数が選ばれたのか?そして、どうやって“1秒”とつながっているのか?
この記事では、デジタル時計の精度を支える技術の裏側に迫ります。
水晶振動子

水晶振動子ってなに?
水晶振動子は「正確な時計の心臓部」のようなものです。時計やパソコン、スマホなど、あらゆる電子機器の中で、「タイミングを取るための基準(クロック)」を作り出しています。
項目 | 内容 |
正式名称 | 水晶振動子(Quartz Crystal Oscillator) |
主な材料 | クォーツ(水晶) |
特徴 | 非常に正確で安定した周波数を出せる |
主な用途 | 時計、コンピュータ、通信機器など |

なぜ水晶なの?

水晶には「圧電効果(あつでんこうか)」という性質があります。
- 水晶に電気を加えると ⇒ 一定の周波数で振動する
- 振動すると ⇒ 電気信号を発生する

この性質を利用して、非常に安定した周波数の信号(=時間の基準)を得ることができます。

じゃぁ、発電できるの?

はい、水晶の圧電効果を使って「発電」は可能です。

ただし、現実には「非常に小さな電力」しか取り出せないため、用途はかなり限られます。(電子ライターなど)
使用シーン

どんな場面で使われる?
使用機器 | 目的 |
デジタル時計 | 秒単位の時間を正確にカウントする |
コンピュータ | CPUの動作タイミング(クロック)を決める |
スマートフォン | 通信のタイミングを制御する |
テレビ・ラジオ | 信号の周波数を安定させる |
車のECUなど | 正確な制御タイミングが必要な機器 |
クォーツ時計

時計のクォーツとは違うの?

「時計のクォーツ」と「水晶振動子」は、基本的に同じ原理のものです。

ただし、言葉の使い方や目的によって少しニュアンスが異なります。
どちらも水晶(クォーツ)を使った振動子
- 「クォーツ時計」や「水晶振動子付きの回路」では、どちらも水晶の振動を利用して正確なタイミングを作り出します。
- 使っている水晶部品は、同じような圧電効果を使った「水晶振動子(Quartz Crystal Oscillator)」です。
呼び方 | 主な使われ方 | 意味の違い |
クォーツ(Quartz) | 時計の世界でよく使う言い方 | 「クォーツ時計(Quartz Watch)」というと、水晶振動子で動く電子時計を指す。 |
水晶振動子 | 電子部品としての技術的な名前 | 時計だけでなく、パソコンやスマホなどの機器全体に使われる。 |
クォーツ時計とは
クォーツ時計は、水晶振動子が1秒間に32,768回振動する特性を使い、その振動を電子回路でカウントして、正確な1秒を作り出しています。
多くのデジタル時計には「32.768kHz」の水晶振動子が使われています。
32.768kHz

なぜ、32.768kHzなの?
質問 | 回答 |
32.768kHzは偶然? | ❌ 偶然ではなく、意図的に選ばれた |
誰が決めた? | 初期の電子時計開発者たち(特にベル研究所・セイコー) |
なぜこの数? | 2¹⁵(2の十五乗)という分かりやすさ 低消費電力 十分な精度のバランスが良いから |

たまたま32,768回の振動だったの?

違います!
正しい理解
「1秒に合わせて32,768Hzの水晶を選んだ」のではなく、「32,768Hzという扱いやすい周波数を“基準”にして、それを1秒になるように“分周(カウント)した”」のです。
- 先に決まったのは「32,768Hz(=2¹⁵)」という周波数。
- それを基準として、15回 ÷2 して 1Hz(= 1秒に1回)を作った。
つまり、「これを1秒にしよう」と設計したのが本当の流れ。

どうしてそうしたの?

2進数の世界では「2のべき乗」がとても扱いやすいからです。
特に 2¹⁵(=32,768)は、
- 周波数としては低消費電力で扱いやすい
- 精度も実用的に高い
- 分周(÷2の繰り返し)も単純な回路でできる
⇒ だから、「これを1秒の基準にすればいいじゃん!」となった。
つまり、時間(1秒)に周波数を合わせたのではなく、周波数(32.768kHz)から1秒を作った。
おわりに
目に見えない小さな水晶片が、32,768回も震えて、私たちに「1秒」という時間を届けてくれています。
この数字の背後には、電子工学と結晶の物理が生み出した見事な設計思想があったのです。
何気なく見ている時計の「1秒」には、そんな深い仕組みが隠れているのです。
でわっ!!
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